神津恭介シリーズ

神津恭介

神津恭介とは

日本で推理小説の隆盛に多大な貢献をしたのは江戸川乱歩であり、その功績が大きいことは、すでに広く知られていることです。

その江戸川乱歩が創作した明智小五郎は推理と活劇を楽しめる内容で有名です。また、発表当初から現在に至るまで、色々な俳優によって映像化されている横溝正史の金田一耕助もまた、猟奇的な謎を解き明かすという内容で人気が続いています。

この江戸川乱歩の明智小五郎、横溝正史の金田一耕介と並んで「日本の三大名探偵」と称されるのが、高木彬光の神津恭介(かみづ きょうすけ)です。

初登場は高木彬光のデビュー作でもある「刺青殺人事件」。

本職は東京大学医学部法医学教室助教授、その後、教授職を務めたあと退官。

身長169センチの美男子で、ピアノもプロ級の腕前。

英語・ドイツ語・フランス語・ロシア語・ギリシア語・ラテン語の6カ国語を駆使することができる。

「神津の前に神津なく、神津の後に神津なし」と学生時代に発表した論文から評された天才という設定です。

このプロフィールを考えてみると、まさに現代の、別のきちんとした本業を持っていて、何らかの形で事件に関わりを持ち、その解決に協力する民間人のポジションの探偵の原型が、すでにここに完成していたということがわかります。

例えば浅見光彦はフリーのルポライターが本業なのでちょっと違いますが、大学の助教授、今の准教授という立場は、学部は医学部、物理学部、工学部と違ってはいますが、東野圭吾のガリレオシリーズの湯川学も、森博嗣のS&Mシリーズの犀川創平も、三人ともまったく同じです。

従って、探偵事務所を構えることもなく、現場の浮気調査や不倫調査、尾行調査や素行調査などはしません。関連性はわかりませんが、もしかして湯川学や犀川創平を書く際にモデルにしたのかもしれないと思うと、感心しました。

明智小五郎や金田一耕助ほどの知名度はないものの、神津恭介はその天才的な頭脳の閃きで事件や問題を解決していきます。

神津恭介の作品

登場する作品は長編小説では、

「刺青殺人事件」「呪縛の家」「魔弾の射手」「地獄の舞姫(未完)」「わが一高時代の犯罪」「白妖鬼」「輓歌」「悪魔の嘲笑」「人形はなぜ殺される」「死を開く扉」「成吉思汗の秘密」「白魔の歌」「火車と死者」「死神の座」「邪馬台国の秘密」「狐の密室」「古代天皇の秘密」「七福神殺人事件」「神津恭介への挑戦」「神津恭介の復活」「神津恭介の予言」

などです。

短編小説では、

「妖婦の宿」「影なき女」「原子病患者」「邪教の神」

があります。

さすがに明智小五郎や金田一耕助よりも回数は少ないものの、映像化されている作品がいくつもあります。

映画は河崎保が「わが一高時代の犯罪」。

テレビドラマは近藤正臣が「探偵・神津恭介の殺人推理」シリーズ全11回。

村上弘明が「天才・神津恭介の殺人推理」シリーズ全2回、ほかに津川雅彦、片岡愛之助も神津恭介を演じたことがあります。