探偵小説はそのハードな仕事内容から、しばらくの間は主人公は男性専門でしたが、現在では多くの女性が進出しています。
サラ・パレツキーのデビュー作で代表作でもある「サマータイム・ブルース」から始まる、女性私立探偵V・I・ウォーショースキーの活躍を描くV・I・ウォーショースキーシリーズもそのひとつです。
Vはヴィクトリアの略で作品中では「ヴィク」、「ヴィッキー」などの愛称で呼ばれています。
このシリーズは2012年9月までに15冊書かれています。
1985年6月の「サマータイム・ブルース」以降、
の順番です。
女性の私立探偵
女性私立探偵ですが、格闘あり撃ち合いありのハードボイルド小説です。
物語の舞台となるのはシカゴです。都心のループ地区に探偵事務所を構えています。
一日125ドルと必要経費を料金とし、報告書は作成しますが調査方法の指図はお受けしませんという方針を掲げて、尾行調査・浮気調査・素行調査・不倫調査などを手がけます。
多層な人種が入り交じるシカゴの複雑な事情や学生運動の残響など、1982年当時の状況が盛り込まれています。
登場人物はきめ細かな描写で厚みがあります。骨太なつくりの小説です。男に媚びず人に頼らずを貫く空手の達人で個性的な美人のヴィク。
元弁護士という設定で、強い意思と鋭い知性を併せ持ち、世の中の不正には目をつぶることができない性質です。
慈愛に溢れ、困っている人に出会うと放っておけない、弱者の痛みを知るタフなヒロインでもあります。そんな女性私立探偵ヴィクの語りで進められる物語です。
会話はテンポよく、ヴィクの毒舌が小気味よく伝わり、作品世界に引き込まれます。猪突猛進で事件に立ち向かうヴィクとともに、本格推理に挑む楽しさもあります。
ちなみに映像化されたものとしては、1991年に公開されたアメリカ映画「私がウォシャウスキー」は、ジェフ・カニューが監督、キャスリーン・ターナーが主演です。
これはV・I・ウォーショースキーシリーズの2作目「レイクサイド・ストーリー」が原作となっています。
1996年にはNHKが、松坂慶子の主演、丸山昇一の脚本で「女にも七人の敵」のタイトルで翻案テレビドラマ化しています。