キンジー・ミルホーンシリーズ

キンジー・ミルホーン

キンジー・ミルホーンシリーズの魅力

しばらくの間、探偵小説の主人公は男性専門でしたが、そのハードな仕事内容にも関わらず、少し前から多くの女性が取り組むようになりました。

アメリカ合衆国の推理作家スー・グラフトンの「アリバイのA」から始まる、女性私立探偵キンジー・ミルホーンを主人公としたキンジー・ミルホーンシリーズも、有名な女性私立探偵シリーズのひとつです。

1982年にシリーズ第1作「アリバイのA」を刊行し、日本では1987年3月に刊行されました。以下の作品が邦訳出版されています。

「泥棒のB」「死体のC」「欺しのD」「証拠のE」「逃亡者のF」「探偵のG」「殺人のH」「無実のI」「裁きのJ」「殺害者のK」「無法のL」「悪意のM」「縛り首のN」「アウトローのO」「獲物のQ」「ロマンスのR」

アメリカでは2005年刊行のSから2013年刊行のWまでありますが、日本では2005年7月に刊行されたR以降は邦訳出版されていないようです。

作品は日本語だけでなくブルガリア語やインドネシア語を含む26カ国語に翻訳され28カ国で出版されています。

キンジー・ミルホーンについて

このシリーズの主人公キンジー・ミルホーンは、カリフォルニア州の架空の都市サンタ・テレサに住んで探偵事務所を構えています。

この都市は、先達のアメリカの推理作家、ロス・マクドナルドが自分の小説でサンタバーバラをモデルに創作した都市です。スー・グラフトンはマクドナルドへの尊敬を込めてサンタ・テレサを舞台に選んだようです。

32歳で2度の離婚歴がある女性私立探偵キンジー・ミルホーンの活躍を描きます。

浮気調査・素行調査・尾行調査・不倫調査など、私立探偵が依頼を受けて事件を捜査していく過程がよくわかります。

時代設定は80年代のため、携帯電話のある現代だと成り立たない話ですし、お決まりの地元警察とのやり取りはいまひとつですが、探偵同士の日常的な協力や請け負った仕事のレポート作成など、ちょっとしたことも興味が持てます。

タフでクールだけど心のどこかに、こんな生活を嫌っていて、できれば誰かに甘えたいと思っているキンジー。そう思っていながらも実行できずに肩を怒らせているのが、男勝りな行動の中に見え隠れしていて楽しめます。

無駄のないストーリー展開で、比較的短い話でテンポも良く、わくわくしながら読み進めることができます。コージーミステリを軽すぎると思える人向けの本格的です。

特に暗くもなく、社会の問題を告発するような場面もありませんので、女性が活躍するミステリを読みたい人にお勧めです。