マイナーでまだあまり知られていない探偵小説と思えるのが、愛川晶の美少女代理探偵・根津愛(ねつ あい)シリーズです。
愛川晶のペンネームの由来は、書店や図書館で作家名別で並べられた際に、五十音順で最も前に来るようにと考え抜いてつけたそうです。
愛川晶は高校で社会科教員として勤務していました。1994年の第5回鮎川哲也賞に応募した「化身」で鮎川哲也賞を受賞して作家デビューしています。大掛かりなトリックを特徴とする本格推理小説を多く執筆しています。
この愛川晶のシリーズものとして女子高生探偵が活躍する根津愛シリーズがあります。
根津愛のプロフィールは、まず仙台市内の女子高校に通う16歳の高校2年生で正統派の美少女です。父・根津信三が宮城県警の敏腕刑事だったことから、その代理として事件に関わっていくために美少女代理探偵と呼ばれます。
コンビを組むのは宮城県警黒岩警察署刑事課の刑事で、以前は父の部下だった桐野義太です。桐野義太は彼女に惚れ込んでいて、根津愛を作中で紹介する際に最低一回は「とびきりの美少女」という言葉が出てくるほどです。
初登場作品は「一円切手四枚の謎」です。単行本未収録の根津愛のデビュー短編です。
これは、推理作家の若竹七海が大学生の時に体験した奇妙な出来事を巡る謎を綴った「競作五十円玉二十枚の謎」をモチーフにした作品です。
次に、芦辺拓と二階堂黎人の呼び掛けによって集まった、本格ミステリ界の旗手総勢11名が参加した、新世紀「謎」倶楽部による短編アンソロジー「新世紀「謎」倶楽部」に書いた「だって、冷え性なんだモン!」に登場しました。
ちなみにこの本、「新世紀「謎」倶楽部」はメンバー11人の傑作短編をテーマ別に収録した本格推理傑作集です。
そしてこの新世紀「謎」倶楽部の二作目「堕天使殺人事件」では「第十章 探偵、登場!」で根津愛が桐野義太と共に登場して推理を披露します。
この「堕天使殺人事件」は人気ミステリー作家11人によるリレー本格推理小説です。事前の打ち合わせや相談など一切無しで書き次いだ作品です。
書き順及び参加者は、
それから「夜宴—美少女代理探偵の殺人ファイル」が根津愛の長編デビュー作です。根津愛が持ち前の推理力を駆使してオカルトめいた事件に立ち向かっていくのがいいです。
その他、短編集として「根津愛(代理)探偵事務所」があります。文庫化で「カレーライスは知っていた—美少女代理探偵の事件簿」に改題。一般的な尾行調査や素行調査、浮気調査や不倫調査とは一味違う調査が楽しめます。
長編は「巫女の館の密室」「ダイニング・メッセージ」。さらに、影の探偵と根津愛シリーズとして「網にかかった悪夢」「ベートスンの鐘楼」があります。